舞台裏の仲間たち 13~15
この会場変更が最後の決め手となり
予約チケットが、10日前にはすべて完売となるという
異常事態をうみだしました。
消防本部と協議を重ねた結果、今回に限り、
消防団員を立ち合わせて上で、100名前後の定員オーバーまで
認めるという結論に達して無事に公演日を迎えることができました。
観客たちの興奮は、いつまでたっても収まりません。
会場の出口で、観客を見送る座長や時絵の周辺では、
いつまでも人の波が留まったまま、立ち去る気配を見せません。
余韻はたっぷりと後を引きました。
私の背後へ、No・19の香りがやってきました。
茜は今回は、子役で舞台に少し出ただけで、
主な仕事として新人二人を引き連れて、照明と音響を担当しました。
舞台装置や後かたずけは全部、明日に回して
とりあえず呑みに行こうと、誘いにやってきたのです。
「・・・いいけどさ、座長や時絵さんはどうする?」
「あの様子では、とうぶん無理だと思うけど。
それに・・・時絵さんの永遠のライバルでもある姉のちずるが、
舞台を見に、わざわざ日立から来てくれているの。
ちずるもさぁ~
みんなと一緒に呑みたいって言ってるんだけど、
でもねぇ、・・・
私としては、できれば座長と時絵に、
あまり会わせたくはないのだけど、どうしょうか・・・
どうする?
私も、立場的に複雑なんだ。」
「ちずるさんが、来てくれたの?
わざわざ日立から。」
「今日は、実家に泊るって言ってたわ。
どうする・・・
姉さんを取るか、
座長と時絵さんを取るか、
それとも私を取るか、3つに、ひとつ。」
「3択かい?
じゃあ、3番目。
誰と呑んでも角が立ちそうなら、
全員に不義理をして、
このまま二人っきりで祝杯をあげに行こう。
いいかい、それで。」
「大正解。
じゃあ今のうちに、ずらかりましょう。」
作品名:舞台裏の仲間たち 13~15 作家名:落合順平