舞台裏の仲間たち 13~15
まだ余韻の中で、ざわついている会場を後に
茜と二人で、逃亡者のように駐車場へと抜けだしました。
エンジンをかけようとした矢先に、助手席から茜の手が伸びて来て
「ちょっと待って」とささやきました。
人影が近づいて来て、2台ほど先の空間で立ち止まりました。
通過する車のライトに照らしだされて、二人の横顔が浮かび上がりました。
まぶしそうに目を細めたのは、ちずると小山君の二人連れです。
「あれ?
向こうの二人組も、
どうや今夜は、逃避行みたいな雰囲気だね。
そうなると今夜の祝杯は
3組ともがそれぞれ、別行動になるということみたいだ。
どうする、茜。
こうなりゃ、こちらも堂々と出て行くか。」
「・・・やっと、
呼んでくれたわね!
そりゃあ、私だっておおいに嬉しいわよ、
そんな風に呼んでもらえれば。
でもさぁ・・・
ムードも何もないわよねぇ、
こんな状況下で、それも何気なくあっさりと
そんな風に呼ばれたってさぁ~
ああ、つまんない。」
「なんだって・・・何の話だ?。」
「え、。気がついてないの?
言ったじゃん。
茜って、呼びつけにしたわよ、たった今。
それもごく自然に。
でもさぁ、ムードは無かったなぁ・・・」
「な~んだ、そんなことか。」
「こらこら、そこで手を抜くな。
女はそういう些細なところにも、細かくこだわるものなの。
大事な問題だもの、お願いだからもう一度、気持ちを込めて
ちゃんと呼んでみて!」
「後にしてくれよ、」
「言いなさいよ。」
「・・・・」
「言いなさいってば。」
「・・・・」
「言え!。」
「あ、茜・・・ちゃん。」
「・・・・・・・・ば~っか!。」
(16)へつづく
作品名:舞台裏の仲間たち 13~15 作家名:落合順平