舞台裏の仲間たち 13~15
もうひとりの絵の才能の持ち主の、小山君は
堅実に美術の先生と言う道を選択しました。
こちらも早い時期から、水彩画を中心とした市内の絵画愛好会の中で
中心的な存在となり、指導的な役割も果たしていました。
同じくオペラ歌手を目指した森くんも、
今は、市内のオ―ケストラーを束ねる若き指揮者として、
クラシック愛好家たちからのあつい支持を集めていました。
彼らは劇団が解散以降、それぞれが得意とする分野で
市民たちの中へと入り、すでに10年近くにわたって地道で献身的な活動を
続けてきていました。
それらの土台があったとはいえ、
復活公演の大成功を決定づけたのは、やはり
時絵が舞台に復帰するというインパクトでした。
高校時代からその注目を集め10年前には、圧倒的な説得力で見る人の心を
わし掴みにしてしまった時絵のあの衝撃的な演技力は、
長く演劇愛好家の人たちによって、伝説として語り継がれてきました。
公演一か月前から、徐々に加熱をはじめた注目度は
日を追うごとにさらに高まって、ついに公演場所の変更という
事態までを生み出しました。
当初に予定されていた公民館の講堂では、
入りきれなくなってきたために、急きょ500人が入れる
産業文化会館の小ホールが割り当てられました。
作品名:舞台裏の仲間たち 13~15 作家名:落合順平