こりゃ・・・恋!?
車を降り、店の方へと向かった。
暖簾のような布掛けられたドアを押すと、店内は期待したものとは違っていた。
外観からして、和風を想像していたが、すっきりとした店内は、何処かのリビングかと思う造りだった。
フローリングを正方形に切り出したような板が市松模様に敷き詰められている床。
友人がぼそっと小声で言った。
「どっかでスリッパに履き替えるのかな」
友人が言い出さなければ、きっと自分が言っていただろうとサトルは思った。
「いらっしゃいませ。おかえりなさい」
店に入ったサトルたちにかけられた言葉にサトルは雰囲気を感じ取った。
(ふーん。そういう店か)
「どうぞ。テーブルでもソファでも」
にっこり笑って席を示す女にサトルはあの子の笑顔を重ねて見てしまった。
サトルは、テーブルに着いた。
ぐるっと見渡すと、小規模の家具センターの売り場のようにも見えた。
先ほどの女が、薄いアルバムのようなメニューを差し出した。
サトルは、心躍る気分だ。
「これからは、脱お子ちゃま嗜好だ」
メニューは、似たり寄ったりのファミレスのものとは違う。オリジナルのネーミングがついていた。
そんなに持ち合わせはないサトルは、当然のこと、ネーミングを確かめる前に価格に目がいった。
(あ……)
「サトル、決めたか?」
「いやまだ」
サトルが、メニューから視線を上げるとちょうど女と目が合った。
(決まったの?)とでも聞かれたような眼差しにサトルは声をかけた。
「もう少し、見てからでいいですか?」
(どうぞ)と言ったように 女はにっこり笑って頷いた。
カウンターキッチンの向こう側には、白髪交じりの髭をはやした男。