こりゃ・・・恋!?
通路を行きかけて、立ち止まった。
「あ!」
急いで部屋の前に戻り、鍵穴に差す。差す! 差す!? 差す? 差さらない?
車のキーだったことに サトルは苦笑いした。
(バカか、何慌ててるんだ)
少し冷静になったサトルは、部屋にはいると プレゼントの包みを持って外に出た。
「あ、まただ」
もう一度、部屋の鍵を開け、中に入った。
先日倒れて脚が歪んだフィギュアが、貰った食事のチケットを踏みつけていた。
――フン、アタシノホカニキヲヒカレルナンテ!
なんてことは、全く思ってもないような微笑みがサトルを見送った。
「守っててくれてありがとね。じゃあ行ってきます」
車の鍵を握り締め、ドアにも鍵をかけた。
「よし」
やっと、忘れ物もなく車に乗り込んだサトルは、カオリとの待ち合わせ場所へと走り始めた。
街は少しずつ秋の気配を見せてきたが、青空駐車のサトルの車の中は、熱が篭っていた。
窓を開けて空気を流す。シャワー上がりのサトルも心地良い風を受けていた。
待ち合わせの駅前のロータリーには、迎えを待つ人やバスを待つ人たちが居た。
(さて、何処かな?まだ来てないかな……)
ロータリーをゆっくり回ってみるが、それらしい姿は見つけられない。
(食事に行こうとか言ってないし、どんな服着てくるのかも聞いてないし……と、ん?)
ロータリーも二周目になろうとしたとき、胸の辺りで小さく手を振る女の子が目に留まった。
「あ」
それは、紛れもないカオリだった。
以前に見たファミレスの制服でもなく、『おじさんキッチン♪』でのエプロン姿でもない。