こりゃ・・・恋!?
虚ろに寝たようなぼんやりした頭をシャワーの水しぶきが目覚めさせた。
サトルは着替えると、バイト先に向かった。
いつも通りの作業だったが、いつも以上に張り切った。
何故なら、残業になっては困るからだった。
だが、そういうときに限って、店長の指示が多い。早く片付けるがゆえに作業は押し寄せた。
「今日は張り切ってるね」
パートの女性もそう声をかけるくらいだった。
終了予定時刻が近づいてきた。
サトルの頭の中で予定表が一気に書き込まれていくようにあれこれ浮かんだ。
不思議なことに 昨日はあれほど頭の中を占領していたユリのことは浮かんではこなかった。
「おつかれさま。上がっていいよ」
店長の声に満面の笑顔を見せたサトルに対し、複雑な顔をした店長のことなど知るところではなかった。
「お先に失礼します」
サトルは、離れたところに駐車しておいた車に乗り込むと部屋へと帰った。
汗と汚れを流すべく、シャワーを浴びた。
(そういやぁ、今日は駐禁引っかからなかったな。まあ標識はないから当然だけど。いい日かも)
まだ、引き出しにも入れていなかった新しいシャツに着替えた。
姿見の鏡などないが、映るもので姿をチェックした。
「こんなもんかな。って何を今さら ははっは」
もう何度もカオリとは会っているはずなのに、カオリの誕生日のデートとなると装いに気が引き締まった。
「さて、行くか!」
一人呟きながら靴を履く。もちろんよれよれのバイト用スニーカーではない。
車の鍵を握り締め、ドアにも鍵をかけた。