こりゃ・・・恋!?
暫くしてまた携帯電話が鳴った。
サトルは、一瞬躊躇した。もしもカオリからからの電話であれば、今は出たくなかった。
もちろん、声は聞きたかったが、サトルの胸のもやもやが伝わるのも嫌だった。
だが、その心配は、すぐに解消された。電話は実家からだった。
「はい、何?」
「あら、ぶっきら棒なこと。元気に過ごしてる?」
「あー、大丈夫だよ。そんだけ?」
「迷惑そうね。彼女にでも振られた?」
サトルは、この親、母親のこの鋭いのか、当てずっぽうな問いかけにはいつもはらはらする。
どこか、見透かされている感じが、血の繋がりなのかと思った。
「べつにー。そんなことないよ」
「あら?ちゃっかり居るんじゃない、彼女。じゃあ、明日じゃなくて明後日あいてる?」
「えっと(あ、カオ…の)あー駄目かな」
「そう、残念。お父さんがね。社員旅行のビンゴで食事のチケット貰ったんだけど、その日出張なんだって」
「おふくろ、誰かと行けばいいじゃない」
「昼間ならともかく…じゃあ、サトルがデートしてくれるの?」
「は?」
「冗談よ。だから貴方が誰かと行けばと思って。明後日、その子誘えないの?」
「だからー居ないって」
「あらそう!まあ、取りにいらっしゃい。それまでに見つければいいから」
「何勝手な事言ってるんだよ」
電話の先で玄関のチャイムの音がした。
「あ、父さん帰って来たから切るわね」
ガチャン。
サトルの耳に響くほどの音で電話が切れた。
(あさってかぁ。悪くないじゃん)
電話を握りしめ、サトルはほくそ笑んだ。