こりゃ・・・恋!?
カオリの誕生日が二日後と知り、サトルは床に転がったまま、右に左に身体を返す。
傍目から見たら、どうしようもない痛みにのたうち回っているようだ。
気持ちは、まさにそれであった。
(好きな人のことは、どこまで調査しておくものだろう?)
漠然とそんなことを思い浮かべていた。
今さらあがいても仕方がないことだとサトルは自分に言い聞かせるが、どこか否定の言葉を投げかけるサトル分身が大きな勢力を持って圧し掛かった。
>そんなことで何が彼氏だ!
>誕生日くらいは必須だろ!
>何を知ってるんだ?
そんなサトル分身におののき、自分の体温を感じるほどの時間を床で丸まっている場合じゃなかった。
起き上がり、小引き出しの中から、滅多に見ることのない預金通帳を出し、広げた。
「あ、記帳してなかった」
溜め息と苛立ちとで小引き出しを閉めたとき、大事にしていたフィギュアが倒れ、脚が歪んだ。
「あ!……ああぁ……はぁ……」
一気に意気消沈した。
あと四日分の生存の糧を来るべき日に当てるべきか?それとも三日先の給料日まで延ばして、誕生日らしく祝おうか?
(カオリは何を欲しいと思っているだろうか?)
(『会いたいだけだから……』そんな事言っていても、すごく期待しているんじゃないかな……)
前述の場合、予定通りに行かなければ、大きく恥をかく。
かといって、後述までの日々をうまく誤魔化せたとしても……カオリからの逢いたいという申し出がふいになる。
そんな考えを何度も思い巡らせながら時間は過ぎていった。