こりゃ・・・恋!?
後日、サトルがひとりあの店に居た時だ。
「おじさん、おばさん、ただいまー」
その聞き覚えのある声に入り口を見ると、入って来たのはカオリだった。
(あ、ひとりで来たのかなー?ずいぶん慣れたんだな……あ、気付かれちゃうよ)
男が声を掛けた。
「おかえり。あ、来てるよ」
「え?誰が?まさか……」
店内をぐるっと見ればすぐに気付いた。
店の奥から女が出てきた。
「あ、カオリいらっしゃい。今日バイトは?」
「うん、半日だけ出たよ。ねえ、おばさん彼来てるみたいなの……どうしよう」
「いんじゃないの?本当の事、話せば」
(ねぇー)と言うかのようにサトルのほうに女の視線が伸びた。
女は、カオリの腕を掴むと、サトルの所に来た。
「サトル君来てたの」
「ああ。こんにちは……?????」
言葉が続かなかった。
女は、カオリの後ろ側に回って背中を押すようにして話し始めた。
「紹介するね。姪っ子のかおりです。」
「姪?ってことは、本物おじさん、おばさんってこと?」
カオリは、困った笑顔でサトルを見た。初めて見せる顔にサトルはにやけそうだ。
(可愛いじゃん。おっと!)訳もなく咳払いをした。
「うん、そうなの。だからあの日、びっくりしちゃった。嘘ついててごめんね」
(いいよ、いいよ。そんなのほんのちっぽけなこと……でも驚きはでかいぞ!)
「じゃあ、カオリ・・・さん。僕、帰るよ」
「もう?」
「授業があるんだ。一応学生だからね」
「わかった」
「また連絡するよ」
「うん。あ、授業終わったら、ここに来て。ここで待ってるから」
「わかった。じゃあまたね」
サトルは、「いってらっしゃい」の言葉に送られて店を出た。
いつものここでの帰り挨拶が、特別に感じた。