こりゃ・・・恋!?
あれから、何度かサトルはこの店を訪れた。友人とも来たが、ひとりで来るほうが多かった。
もちろん、あの子のバイトする店にも数回訪れたが、いつも居るとは限らなかった。
サトルにとっては、会えたり、会えなかったり、くじに当たるような気分だった。
久し振りにその店に訪れたときは大当たりの日。精算もあの子が務めた。
だが、先日のことがある。妙に落ち着かない。きっともうメールアドレスの事など記憶にすら残っていないだろう。だがサトルは、理由を聞いてみたくなった。
「覚えてる?」
「はい。……冗談のつもりだったんですね」
その女の子は、崩れない笑顔のまま答えた。
「違うよ!どうして?」
「繋がらなかったですよ」
女の子は、エプロンのポケットからシワを何度も伸ばしたような紙片を出してサトルに渡した。
あの日、サトルが走り書きした紙だった。
確かめるサトルはすぐに書き間違いに気が付いた。
「あ、ごめん。違ってる、ここ。あ、ペン貸して。ここが……はい、これで」
その紙片をまた女の子に返した。
「ごちそうさま」
サトルは、足早に店を出て行ってしまった。
嬉しいはずなのに、それよりも別の感情がサトルの背中を押してしまった。