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天の卵~神さまのくれた赤ん坊~【前編】 Ⅱ

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 紗英子は悩ましい声を上げながら、ベッドの上でのたうち回る。胸を執拗に愛撫された後は、脚を大きく押し広げられる。直輝の頭が開かされた両脚の狭間に埋まっていた。
「直君、そこは駄目、駄目よ」
「何が駄目なんだ? 紗英子はここを舐められるのがいちばん好きなんじゃなかったか?」
「だって、気持ち良すぎて、壊れそう―」
「壊れれば良いじゃないか。こんなに気持ち良くなるのは、久しぶりだろ?」
 紗英子を容赦なく追い上げる直輝の声もまた、欲情が滲んで甘く掠れている。
「だって、恥ずかしい」
「何を今更、恥ずかしがる必要があるんだ? 俺たちは夫婦だろ、こんなことは何度もやった」
「久しぶりだから、声出すのが恥ずかし―」
 言いかけた言葉は言葉にならなかった。
「あ、あ、あぁっ」
 紗英子は自分でも信じられないくらいの嬌声を上げながら絶頂に達した。
 大きな焔が紗英子をすっぽりと飲み込み、灼き尽くす。
「どうだ、気持ち良かったか?」
 顔を覗き込まれても、紗英子は荒い息を吐きながら、瞳を潤ませるばかりだ。
「胸と舌だけでこれだけ乱れるなんて、紗英子は信じられないほど嫌らしい身体をしてるんだな」
「―直君の意地悪」
 紗英子が拗ねたように言うと、直輝が紗英子の目尻に浮かんだ涙を唇で吸い取った。
「でも、そこが堪らなく可愛いんだ。俺はもう長い間、こんな風に可愛らしく乱れるお前を見ていなかった。漸く欲望に素直になった紗英子を見られて、嬉しいよ」
 チュッと音を立て胸の先端を吸われ、紗英子はまた声を上げて身体をくねらせた。
「あうっ」
 直輝は紗英子の反応が気に入ったらしく、何度でも胸の尖りを執拗に責め立てる。揉んでは吸い、吸われては揉まれを繰り返している中に、ベリーのような可憐な胸の蕾は唾液に濡れて淫靡な光を放ち始めた。
「見えるか? お前のおっぱいが濡れまくって、物凄く嫌らしく見える、こいつは堪らんな」
 直輝は堪りかねたように、紗英子の形の良い乳房のあちこちを強く吸い上げてゆく。先端だけでなく、こんもりと盛り上がった部分のすべて、乳輪と余すところなく口づけていった。その度に、チュッ、チュッと嫌らしい音がしじまに響いてゆく。
「もう、いや。直君、許して、このままじゃ、私、狂っちゃうから」
「いやじゃないだろ」
 直輝が乳房を銜えたまま喋ったので、紗英子の身体にまた妖しい震えが漣のように駆け抜けた。
「やん」
 身体をくねらせる妻を、直輝は満足げに見つめる。
「今度は俺の番だ。紗英子の可愛らしい身体で俺を楽しませてくれ」
 直輝は一旦、紗英子から離れた。それまで執拗に責め立てられ弄られていた胸が急に淋しくなった。紅いグミの実のような尖りは触って欲しいとしきりに訴えている。ひんやりとした外気に触れ、まだ濡れたままの胸の突起がふるりと震えた。今はその程度の刺激すら、紗英子の身体に快感をもたらしてしまう。
 時間をかけて丹念に愛撫された身体は、今やすっかり敏感になり、些細な刺激さえにも反応してしまうほど感じやすくなっている。
 直輝は紗英子を軽々と持ち上げた。自分が下になって座り、紗英子をその上に跨らせる。
「さあ、自分で挿れるんだ」
 最早、ここまで来ては逆らえない。紗英子は夫の言葉に導かれるままに自ら腰を上げ、再びゆっくりと降ろした。丁度、直輝のすっかり勃ち上がったものが紗英子の秘所に当たつている。直輝の舌や指でさんざん捏ね回され、弄られた花びらは幾重もの襞をすっかり潤ませ、しっとりと濡れて準備を整えていた。
「う―」
 紗英子の秘所が切っ先を飲み込み、直輝自身をいざなうかのように奥へ奥へと誘導する。紗英子はゆっくりと腰を沈め、直輝のものを受け容れていった。
 突如として、直輝が紗英子の腰に両手を回した。そのまま一挙に腰を引き寄せられ、紗英子は夫のものを完全に飲み込むことになった。更に強く抱きしめられれば、直輝の剛直がなお深く紗英子の中に沈んでゆく。結局、紗英子は最奥部まで夫を受け容れさせられ、飲み込まされることになった。
「これでも嫌か?」
 耳許で熱く濡れた声は、淫らな欲情に濡れている。
「―素直になるんだ」
 声と共に、真下から烈しく突き上げられ、紗英子は悲鳴を上げた。
「直君、私、もう―」
 もう、駄目。その言葉は直輝の烈しい口づけによって遮られた。何度も勢いをつけて腰を打ちつけられ、紗英子は直に達した。今し方、最初の絶頂を迎えたばかりの身体はたちまちの中に切なさに飲み込まれ、大きな焔に灼き尽くされる。
 あまりに烈しい快感に、眼の前が真っ白にになり、意識が一瞬飛んだ。
 それでも、直輝は何かに憑かれたかのように紗英子を揺さぶり続ける。今、達したばかりなのに、また次の波が来そうで、紗英子はあまりの快楽地獄にもがき、喘ぐしかなかった。
 直輝は腰を回し、あるときは彼自身を殆ど抜けそうなほど引き抜き、一挙に最奥まで刺し貫く。しまいには紗英子は烈しく揺さぶられ、意思のないマリオネットのようにがくがくと身体を揺らすだけになった。
 何も身につけず、ただ直輝から贈られたエメラルドのネックレスだけを身につけたままの姿で、紗英子は身を仰け反らせ、切ない声を上げ続ける。
 苦しい、でも、死にそうなほど気持ち良い。
 紗英子は下から執拗に突き上げられながら、あまりにも烈しすぎる快感に涙を流した。
 きっと、あの夢は私自身。
 二日前に見た淫らな夢の主人公たちは直輝と自分だったのだ。紗英子は確信を深めた。
 だが、目覚める間際、夫にあられもなく脚をひらいて跨っていた女がちらりと顔を見せたような気がする。そのときに見た女の顔は自分ではなかったような―。
 あれは、一体、誰だったのだろう。自分でないとすれば、誰? 何かとても懐かしい、見憶えある顔だったような気もするのだけれど。いや、あれはやはり自分だったに違いない。他ならぬ自分自身の顔を見たからこそ、どこかで見た女の顔、誰かに似ているような胸騒ぎがしてならないのだ。
 紗英子は無理に自分に言い聞かせる。
 その間にも、直輝の責め立ては容赦がなくなり、紗英子は更に追いつめられて、極限目指して上りつめてゆこうとしていた。
「何て綺麗なんだ、素敵だよ、紗英子」
 直輝が感に堪えたように呟く。
「直君、許して、許して」
 自分でも何を口走っているのか判らない。
 それでも、最後はやってくる。最後のひと突きで、紗英子は何度目になるか判らない絶頂を迎え、同時に直輝も達した。ビュクビュクと熱い飛沫が感じやすい最奥で弾け、まき散らされてゆく。
「あぁ、あうっ、ああー」
 最奥で飛沫が散り、内壁に当たる度に、感じたことのないほどの快感が下腹部から四肢へと拡散し、冗談ではなく、このまま気が狂ってしまうのではないかというほど気持ちが良かった。
「愛してる、紗英子」
 意識を失う寸前、直輝の声が耳に流れ込んできた。少なくとも、この瞬間、直輝は確かに紗英子を抱き、心から妻を愛しいと思ったのだ。その言葉にも心にも嘘はなかっただろう。
「もう、無理。直君―」
 あまりに烈しい荒淫に、紗英子は身も心も疲れ果て、深い眠りの底に落ちていった。