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泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
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私に還る日

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 石造りの街並みが、そこに相変わらずあった。だが、これまで見てきた他の地域とは雰囲気が異なっていた。
 そこもやはり広場ではあったが、建物の前にはパラソルが立てられ、下には円形のテーブルの周りに椅子が並べられていた。
 小ぶりながらもきちんとした屋根のある駅には路面電車が停まっているのが見える。ここで暖野は初めて電車を見た。二重屋根(ダブルルーフ)にポール、大きな緩衝器(バッファ)をもつ電車は、それを初めて見る暖野にさえ奇妙な懐かしさを感じさせた。
 さっきマルカが言ったように、ここは港湾地帯なのだった。道幅は広くクレーンが幾つもあり、多くの木箱が積み上げられたまま放置されていた。
 道を取り巻く色とりどりのパラソル、それらは船を待つ人達のためのカフェだったのだろう。多くの思いがこの場所を行き交ったのに違いなかった。店先の看板や整然と並べられたプランターもかつての賑やかさを伝えていた。しかしそのどれもが今となっては寂寥感を、それを見る者に煽るだけだった。
作品名:私に還る日 作家名:泉絵師 遙夏