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泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
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私に還る日

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 やがて家並みは途切れ、二人は広い空間に出た。周りには木が植えられていて、ちょっとした公園のようになっていた。道はそこから左へと曲がり、並木道となって続いていた。
 マルカは広場を横切り、その先へと歩いて行く。
「沙里葉河です」
 マルカが振り向いて言う。
 黒々とした水面が見えた。
 ここは、河を見下ろす公園だったのだ。
 暖野は岸辺に寄り、手すりに手を掛けた。柵には凝ったデザインの細工が施されていた。夜の冷たい感触が、手すりの金属を通して伝わってくる。
 対岸には灯りは見えなかった。
 川面は波ひとつなく、静かだった。
「沙里葉河は、この先で月の湖に注ぎます」
 マルカが説明する。
「月の湖?」
「さっき、博士の邸から見えたでしょう」
「ああ。あの湖は、そんな名前だったの」
 邸を去る前に見た月の出を思い出した。
 ここで見る最後で最初の月。
 偶然なのかどうか、あまりに直截的な名前だと暖野は思った。
 暖野は河の流れゆくであろう先に目を向けた。湖は漆黒の森に遮られて、ここからでは見えなかった。
「行きますか」
 暖野が顔を向けると、マルカは言った。
 暖野は頷いた。
作品名:私に還る日 作家名:泉絵師 遙夏