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泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
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私に還る日

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 あまりに多くのことを話されたため熱に浮かされたような感じがしたが、それでも暖野には不思議なことに、突拍子もないこととは思えなかった。
「大体のことは解りました。つまるところ、それを私に救えということですね」
 アゲハが頷く。
「でも、私には無理です」
「そんなことはない」
 アゲハは力強く言った。「でなければ、その時計が動くはずがないからだ。それは、君が動かしたのだ」
「私が? だって、これは偶然――」
「世の中には、偶然などというものはない。全てが必然なのだ」
「だったら、どうして時間の流れが歪められたりするんですか? それだって必然だったんじゃないんですか?」
「そう思うのも当然だ。この世界が喪われるのも必然であると」
 アゲハが言う。「人間が自然に働きかけることそれ自体は、文明の発達過程で必然だ。しかし、人間が必然を操ろうとすることは、どうかね? 人がそうすることすら必然かね?」
 暖野は分けが分からず、黙っていた。
「人が必然を操作する――いや、逃避しようとした。或いは目を背けた。それだけではないのだ、この世界の消滅にかかわる力は。端的に言えば、ある存在が人々の意識から消去されたのだ。それも、それを最も必要とするであろう人々によって。全てが仕組まれたことだった。自然の成り行きでは決してない。因縁とでも言おうか、そういう全くいわれのない理由で、存在が時空間で弾劾されたのだ。それは即ち、宇宙そのものが弾劾されたようなものだ」
 アゲハは憤りも露わに言った。それまでが静かな口調だっただけに、暖野は体を硬直させた。だが彼はすぐに冷静さを取り戻し、元の柔和な表情になって暖野に言った。
「君にはできるんだよ。それに、君は自らの力でここへ来られたのだから」
「時計を動かしたのも、バスでここへ来たのも、私の力だと?」
「そうだ。いくら働きかけても、君がそれに呼応してくれなければ、どうにもならない」
「当然、戻ることもできるんですよね?」
 暖野は、最も気になっていることを訊いた。
「帰れるとも。君は、“還る”ためにここへ来たのだから」
「ここはもうすぐ消えると仰いましたね。それなら、私が来たことの意味なんてないんじゃないですか?」
「そんなことはない。この世界は普通の時間軸に従って消滅するわけではないからだ。時間を遡ったかたちで最初から存在しなかったことになるのだ。だから――」
「だから?」
「その最初から、始めるのだよ」
「最初から……」
「そう。世界は、君のもとで新に再編される。それしか方法は残されていないのだ」
作品名:私に還る日 作家名:泉絵師 遙夏