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郷田三郎(G3)
郷田三郎(G3)
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カガミノカギ

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カガミノカギ



 病院に駆けつけたときはもう、親父は殆ど意識が無かった。
 おふくろは小さい頃に家を出てしまい、俺は親父の男手ひとつで育てられた。
 もっとも親父は殆ど家には居らず、定職も持っていなかった。
 おふくろが家を出たのもそれが主な原因だと、親戚のおばちゃんも言っていた。
 しかも何故家を空けるのか、未だに語ってはいなかった。

 そんな親父が今際の際にオレに手渡したもの――それは。

 鎖の付いた二つの鍵だった。
 どちらも鍵としては単純なものであったが、片方が何の素っ気もないモノであるのに対し、もう片方は偉く見事な装飾が施してあった。

 何の鍵なのか、安っぽい造りの方は直ぐに解かった。
 親父のたった一つの持ち物である机の、引出しの鍵だ。
 鍵を開くとかなりの数のノートが重なって入っていた。
 俺は俺の知らない親父の一端が分かるかも知れないと思い、ノートを上の方から捲っていった……。

 ノートに書かれていたのは日記だった。
 しかし几帳面に毎日書かれるようなものでは無く、何か有った時に忘れない為に記憶しておく、そんなものだった。
 何か有った。その荒唐無稽な話は初め、小説か何かのネタつくりなのかと思った。
 あの事があるまでは……。
作品名:カガミノカギ 作家名:郷田三郎(G3)