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瑠璃 深月
瑠璃 深月
novelistID. 41971
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忘れられた大樹 後編

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ロイがびっくりするひまもなく、フォーラの拳が彼のみぞおちを打った。ロイはそのたった一回で気を失い、地面に倒れた。その時にはもうアースも動いていた。
 ロイが倒れたその瞬間、ハワードの猟銃が何発か空砲を撃ったと思うと、同じく地面に倒れてしまった。
 それを見ていたヒルデは悲鳴を上げて、二人の男の間をうろたえながら右往左往していた。
 アースとフォーラは涼しげな顔をして、まるで何もなかったかのようにそこに立ち、他の皆を森の中へと誘った。
 森の中に入ると、ハルは、村には戻らずに自分の母木へと直接行くという。戻ってしまえば、覚悟が薄れるからだ。村の人たちにひきとめられたら、この先何もできなくなってしまう。
 春の気持ちを重んじ、一同は森の中心へと分け入っていった。
 街道をはずれ、森の木々や低木の生い茂る中を歩いて数分、何度か性質の悪い猟師たちに難癖を付けられたり襲われたりしたが、そのたびにアースやフォーラの鉄拳が飛んだ。
 地球のシリンであるアースはともかくとして、一見脆弱そうに見える美人のフォーラがこんなに腕っ節の強い女性だったことに皆は驚いた。しかし、アースと一緒に暮らしているうちに彼からいろいろな技を教えてもらったとフォーラが笑いながら言うと、皆は自然に納得してしまった。
 そのあとは、皆、ただ黙って道なき道を進み、生い茂る草を分けながら進んでいった。フォーラがどれだけがんばっても雰囲気は一向によくはならない。サムは先程までのショックを今だ引きずって俯いたままだし、カレリはカレリでむっつりと黙ってしまっていた。子供の笑顔のない集団ほどつまらないものはなかった。
 皆が黙ったまましばらく進むと、ようやく森の中心に着いた。
 サムとカレリは、真顔のまま真っ先に集団を飛び出して、その先に見えるハルの木に駆け寄っていった。
 後からついてきたハルたちが森の中心、樫の大樹の広場に着いた時には、すでにカレリとサムは根元にいたナリアに抱きついていた。
「用意は出来ています」