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瑠璃 深月
瑠璃 深月
novelistID. 41971
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忘れられた大樹 後編

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傷を完治させたハルは、カレリたち訪問者とともに丘のふもとのレストランでの宴席を終え、次の日、森へと帰ることとなった。
 別れ際に、ラッティは瓶詰めの野苺のジャムを、トッドは携帯食にと干し肉をうまく味付けしたものを、ホーリィは木彫りのお守りをそれぞれハルに渡してくれた。
 ハルは、三人に重々礼を言い、レストランを後にした。
 道中、カレリとサム、セベルが付き合い、アースとフォーラが護衛についた。森の中に潜んでいる危険な猟師たちから子供たちやハルを守るためだ。
 レストランを後にすると、ハルは、突然カレリに野苺のジャムを、サムには干し肉を渡した。
 もう、ハルには必要のないものだ。そう悟ったカレリとサムは、泣きながらそれを受け取った。
 死んでしまうわけではないけれど、ハルは忘れられてしまう。カレリやサムを除いた、全ての人間から。森の村の人間からも、同じ仲間のシリンからも。だから、サムとカレリには辛かった。
 死んでしまうよりも、生きていても忘れられてしまうことのほうがずっと辛かった。
 森につくまでの間、カレリとサムは、みんなが忘れてしまっても、私たちだけはハルのことを忘れないでいようと誓い合った。
 街道を進んで少しばかり経ち、森の入り口に着くと、ハル達の前に三人の人間が立ちはだかった。
 彼らは街道を塞ぐように横に並び、手には猟銃やナイフを持っていた。
 猟銃を持って立っているのはハワード、柄の長いナイフを持っているのはロイ、そして、何も持たず、ただ涼しい顔をして煙草をふかしている女はヒルデだった。
 彼らに近づいていくと、おもむろにハワードが一向に向かって猟銃を構えた。
 一行は立ち止まり、アースが前に、フォーラが後ろに、子供たちを守るように立った。
「今度は、よけられまい」
 ハワードはそう言って、にやりと笑った。
「よければ後ろに当たるからな」
 そう言って、ハワードは何発か、猟銃をアースに向けて放った。
 すると、アースは右手を出し、合計で三発飛んできた弾を全て掴んでしまった。
 握り締めた右手を開くと、美しい色をした金色の粉がさらさらと地面に落ちていった。
「全く」
 アースは、溜息をついた。
「お前、本当にシリンなんだろうな」
 そう言うと、皆を守りながら、立ちふさがる三人のもとへ進んでいった。
「今度はそのナイフが飛ぶのか」
 アースがロイを見ると、彼は突然目を宙に泳がせ、困り果てて立ちすくんでしまった。そして、持っていたナイフを急いで服の中にしまいこんで、作り笑いを浮かべた。
 その時、森に向かう一行の中から、突然サムが勢い良く飛び出してきて、皆の前に立った。
「お父さん、お母さん!」