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瑠璃 深月
瑠璃 深月
novelistID. 41971
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忘れられた大樹 後編

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あまりの熱さに、二人は手を開いてどんぐりを取り落としそうになってしまったが、その手を、隣にいたフォーラとセベルが覆い、つよく握った。
 フォーラの手はサムを、セベルの手はカレリを、それぞれ握って、それでもその瞳は正面にいるハルを見据えていた。
「大丈夫。火傷はしないわ」
そう言ったフォーラの顔は真剣だった。次に、セベルが言う。金色の瞳は緊張していた。
「これは物理的なものじゃない。魂や思念の放つ熱だ。決して手を開けてはいけない」
「でも! 熱い!」
 カレリが苦しそうに言うと、今まで明るく振舞っていたフォーラが、彼女を一喝した。
「ハルを見て! あなたたちよりもずっと痛いの!」
 そう言われて、カレリはハッとし、すぐ横に立って弓を持ったままハルのいる方向を真剣に見ているアースに目をやった。
 一点の曇りのない瑠璃色の瞳は緊張を帯び、つよく握り締めた弓を放すことなく、そこに立っていた。
 そして、カレリは、樫の木の袂にいるハルを見た。
 ハルは、その肩に貫かれた矢を抜かれ、ナリアの白い腕に抱かれていた。苦しそうに息をしながら、それでも細々とナリアに何かを告げていた。
「ハル!」
 カレリが叫ぶと、ハルは、ナリアの腕の中から少女を見た。
 苦し紛れに優しく微笑み、小さい声で何かを言っている。
カレリは、それを見て、体中が熱くなった。手の中のどんぐりの熱など、どこかに飛んでいってしまいそうだった。
 カレリの小さな体からは激しい悲しみと、そして、自分を戦火の中から助けてくれたハルへの愛が思い出となって蘇ってきた。
「どうして!」
 カレリは、そう叫びながら、弓を持ったアースに詰め寄った。
「どうしてこんなことをするのよ! ハルが死んじゃう! どうして? どうしてハルを撃ったの!」
 その激しい問いに、答える者は誰もいなかった。
 すると、何も言わないアースの代わりに、ハルを抱いたまま、ナリアが答えた。その住んだ声は凛として響き渡り、迷いも、そして悲しみもなかった。
「ハルは死にません。ハルの子供たち、どうかそのままで、彼を見守っていて」
「そのままで?」
 涙を拭いながら、カレリは言った。
「だってあんなに苦しそうに」
 すると、カレリがその言葉を言い終わらないうちに、ナリアに抱かれていたハルの体から一気に力が抜けて、彼を抱いていたナリアの腕が一気に地面に向かって沈み込んだ。
 そこで、カレリの隣にいたアースが動いた。
 手に持った弓を静かに地面に置き、そして、どこにしまってあったのか、一本のトネリコの木の枝を取り出して地面に突き刺した。