小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
瑠璃 深月
瑠璃 深月
novelistID. 41971
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

忘れられた大樹 前編

INDEX|8ページ/13ページ|

次のページ前のページ
 

さて、ハルがロックストンに会っていたその時。
森の中では、サムとカレリが迷っていた。  
当初は村から続く街道をそのまま歩いて町に続く草原に出るはずだったが、喉が渇いて、おなかが空き、そのために近くの泉に寄っていたために帰り道が分からなくなっていたのだ。
 とりあえず二人の子供は、街道を探すためにあちこちを歩き回っていた。しかし、なかなか道は見つからない。そのうち、ますます空腹は増し、足も疲れてきた。上天にあった太陽も次第に西に傾き始めてきた。二人は不思議と不安は感じなかったが、それでも村では大人たちが心配しているのではないかと想像すると悲しくなってきた。
 へとへとに疲れた二人は、とりあえず近くの木の実をかじり、泉のそばで足を冷やしながら休憩をとることにした。
 しばらくそこで休んでいると、草陰から物音がして、二人は驚きざまにすぐさま立ち上がった。
 音のするほうを見ると、小さなウサギが一匹、うずくまっている。
「なんだ、ウサギか。」
 サムが肩を撫で下ろすと、次の瞬間、後ろから何かが弾ける音がした。
 驚いて後ろを見ても、誰もいない。
 しかし、ガサガサという草を掻き分ける音だけがサムとカレリの周りを取り囲むように響き渡っていた。
 不思議に思っていると、隣でカレリが声を上げた。
「ウサギが!」
 見ると、小さなウサギは背中のあたりから鮮血を流して苦しんでいた。うずくまったまま鳴き声もあげずに、ただ震えている。
 サムが近づいてみても逃げようとしない。
「怪我してる」
言って、サムはウサギを抱いた。
「どうして」
 すると、サムとカレリの正面から、何人もの男たちが草を掻き分けて現われた。手には長い猟銃を持ち、腰にはナイフを下げている。
 カレリは、その男たちを見て、悲鳴を上げた。
「いやよ! 殺さないで!」
 その時、正面にいた男たちのうち、最も背の高い男がサムそばにやってきて、皮の手袋をかけた太い腕を差し出した。
「そのウサギを渡してくれ」
「いやよ!」
 サムが首を振る前に、カレリが声をあげた。
「この子は怪我をしてるのよ。あなたたちには渡さない!」
「怪我はいい。そのウサギは私たちの獲物だ。渡してくれ、お嬢ちゃん」
「だめ!」
 それでもカレリは首を振った。ウサギを抱いたままのサムの前に立ちはだかり、ぶるぶると足を震わせながらも両手を大きく広げて守っていた。この大人たちは猟師だ。背も高く大きな男たち。カレリなどは一ひねりされてしまうだろう。怖い。しかし、それ以上に彼女はウサギを守りたかった。
 すると、奥のほうにいた、もう一人の男が、進み出てきてカレリの腕を掴んだ。
「聞き分けのない子だ」
 そう言って、力の弱いカレリを放り出してしまった。
 少女は、腕をつかまれていとも簡単に放り投げられてしまったが、その時、偶然か必然か、カレリの背中に柔らかい木の枝がその手を広げてショックをやわらげてくれた。
 カレリは、歯を食いしばって立ち上がり、走ってサムの元に戻ろうとしたが、今にも大きな大人たちがサムの手からウサギを奪い取ろうとしていたので、焦って大きな金切り声を上げた。
「その子を連れて行かないで!」