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太陽のはなびら

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【限られた時間の幸せ(2)】



「シンは何か気になるものある?」

ピリカはシンに尋ねた。シンは改めて周りを見渡してみる。
食べ物、本、骨董、生活用品、実に様々なものが売られている。
その中で、シンは骨董を扱っている出店で、奇妙なものを見つけた。
それは、ヘアバンドの両端に、球体を半分にしたようなものがついたもので、耳あての様だった。
シンが不思議そうにそれを見ていると、座っていた商人が話しかけてきた。

「兄ちゃん、これが気にるたぁ、お目が高いねえ。面白い形をしているだろう。これはな、古代の遺跡で発掘された古代の道具、通称アーティファクトの一種でね。<ヘッドフォン>っちゅうんだ。昔はこれを頭につけて音を聞いていたっていう話さ」

「音を、聞く?」

「そうなんだ。昔はこれをほかのアーティファクトにつなぐといろんな音が聞こえていたらしいよ。どうだい? ここはひとつ買ってみないかい? 今なら特別! 五百カンで売ってあげるよ?」

商人はシンにたたみかけるように話しかける。
五百カンは、シンの一か月の収入の三分の一に匹敵する金額だ。
とても安いとはいえない。
しかし、シンは商人の話術に圧倒され、商人のペースにのまれてしまっていた。
下手をしたらそのまま買わされてしまうかもしれない。
そんな状況を、ピリカの一言がひっくり返した。

「それは今も使えるんですか?」

「そ、そりゃあ、アーティファクトにつなげれば使えるはずさ」

商人が刹那、わずかに見せた動揺を、ピリカは逃さずとらえる。

「へえ、それじゃあちょっと使ってみてもいいですか?」

「え、ええと、ちょっとウチで扱っているアーティファクトはこれに対応していなくて」

「要は、壊れているって事ですね。さ、シン。別の店に行きましょう」

ピリカはシンの手を引いて店から離れようとした。

「ちょ、ちょっと待ってくれ! 二百カンでどうだ?」

「シン、あっちにいい帽子があったのよ」

「そ、それじゃあ百カン!百カンでどうだ!」

ピリカは振り向き、天使の様な笑みで、商人に笑いかけ、一言。

「五十カン」

商人は、悪魔を見るような目で、泣きそうになりながら、五十カンを受け取った。

作品名:太陽のはなびら 作家名:伊織千景