太陽のはなびら
咎、愛に包まれ(3)
リュヴリュはほんの山から数冊の本を拾い、シンの手を引いて、リビングのテーブルに腰掛けた。
シンはリュヴリュが何をしたいかわからなかったが、
その真剣な表情を見て、大切なことを彼女がいいたがっていることを理解した。
本をテーブルの上に置き、リュヴリュはシンを見つめる。
あの、すべてを映し出すような、藍色の瞳で。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「私を育ててくれた先生は、昔とても有名な学者だったんです。人文科学、自然科学、枠にとらわれずに様々な学問を研究していたみたいで、古代語も、その中に含まれていたようです。そのおかげか、書斎にも、古代語の本が沢山ありました」
リュヴリュは続ける。
「私、どうしても納得がいかなかったのです。たとえどんな理由があったとしても、自分の子供に【道徳上の罪】という意味の名前をつけることがあるのかって」
シンは黙って、リュヴリュの話に耳を傾けていた。
「シンさんは自分のことをずいぶんと悪い人みたいに言うけれど、私はそう思えません。シンさんは私のことを助けてくれたし、励ましてくれた。そんな人が悪い人だとは思えないんです」
シンはなぜか無性に悲しくなった。この子は何も知らないからこんなこといえるのだ。
リュヴリュの瞳を見る。まっすぐなその瞳は、しっかりとシンの瞳を捕らえていた。
ヒューイが必死にシンがその言葉を言うのを止めようとしていた。けれど、シンは口を動かしていた。
「それは僕が人の心を読み取れる響覚者だとしてもかい?」
静寂の中。ヒューイの無念そうな鳴き声が響く。
そんな静寂を破ったのは、そんな静寂にまったく合っていない、リュヴリュの嬉しそうな声だった。