太陽のはなびら
咎、愛に包まれ(3)
「ああやっぱりそうだったんだ。これで全部つながりました。なるほどなるほど」
思わぬ反応に、シンは呆然とした。
「なんで? なにが? いつから? どうして?」
断片的に口から出る疑問形の言葉をシンは羅列する。
そんなシンをみて、リュヴリュは上機嫌に話す。
「シンさんは言ってましたよね。言葉はひとつの世界だって。それで私思ったんです。共通語で罪という意味のシンという名前も、もしかしたら、どこかの古代語では全然違う意味かもしれないって」
そして、リュヴリュは沢山の本の中から一冊の辞書を取り出した。
「そうしたら、やっぱりあったんです。ここから南東にずっと行ったところの島国の古代語では、シン、あなたの名前は全く違う意味でした」
「どういう、意味だったの?」
恐る恐る、シンはリュヴリュにたずねる。
「それは心(こころ)です。人の心が読める。だから心(しん)なんですよ。道徳上の罪(sin)なんかよりよっぽどぴったり合っています」
胸を張ってリュヴリュは主張する。
「でも、そんなのこじ付けじゃないか」
シンはわれに返って反論した。そうだ。変な期待をしてはいけない。
自分とその島国が関係していなければ、それはただのこじつけに過ぎないのだから。
その言葉を待っていたばかりに、
リュヴリュはテーブルの上の本をもう一冊手に取った。
「世界の武器辞典」と書かれたその本のページをめくりながら、リュヴリュは話す。
「それを見つけるのが大変だったんですよ。確かに、今のままだとこじつけに過ぎない。でも、シンさんが持っていた剣が独特だったので、もしかしてと思って調べてみたんです」
リュヴリュは目的のページを見つけ、シンにそれを見せた。
「シンさんが持っているその剣。正確にはカタナって言うらしいんですけど、実はさっき言った島国だけで作られていたものなんですよ。ちなみにメイキョウシスイって言うのは、心がきれいに澄み切った様子を意味するそうです」
あまりの事に、シンは言葉を失った。今まで自分を縛りつけていたシンという名前。
それに、まさかそんな意味があったなんて。
「あなたは罪なんかじゃない。相手を思いやる心を持った優しい人です」
リュヴリュは力強く、そして優しくほほ笑み、シンを優しく抱きしめた。
リュヴリュの温もりがシンを優しく包み込む。
まるで、自分の全てを肯定してくれているような、
今までシンが受けてきた傷や、
苦しみを洗い流すような温かさ。
なぜか、目の前がまるで水面の様に揺れた。
それが一体なんなのか、なぜそうなったのか、シンは理解できなかった。
シンは、なぜかとめどなくあふれる涙を止める事が出来なかった。
シンはリュヴリュの胸の中で、
まるで、小さな子供のように嗚咽をあげながら号泣した。