太陽のはなびら
【第八章:君は大丈夫】
シンは自分が旅の途中でスコールに巻き込まれそうだったから、
悪いとは思いつつ、雨宿りをさせてもらう為にこの家にお邪魔させてもらったと説明した。
少女は少し不思議そうな表情をして、窓の外を見る。
静まる様子のないスコールをしばらく眺めながら、少女はシンに尋ねた。
「旅人さん、あんなに積もっていた雪はどうしたのですか?」
シンは首をかしげた。季節はもう春だ。雪なんて降る訳ない。そう少女に伝えた。
「今は、春」
シンの言葉を、まるで咀嚼するかのように少女は繰り返す。
そして、家の中を見渡し、あることに気がつき、目を見開き、ベッドから飛び起きた。
「春ですって?」
少女は動揺した様子で、窓に近づき、スコールが降る外の景色を、食い入るように見つめた。
そして、振り返ってシンに問いつめた。
「先生は、先生はどこへ行ったんですか?」
少女は取り乱しながらシンの体を揺する。
その瞳には、うっすらと涙が浮かんでいた。とりあえず、落ち着かせないといけなさそうだ。
「クッキーがあるんだけれど、よかったら話しながら食べないかい?」
「そんなことしている場合じゃ」
ないと言おうとしたその声は、元気になった少女のお腹の音でかき消えた。
「お腹が減っているといいことないよ。まずは落ち着いて」
少女は何かを言いたげな表情をしたが、シンの言葉にうなずいた。