太陽のはなびら
【深い眠りの中の君(2)】
少女は大きな耳当て帽子をかぶっている。
帽子の下に覗く艶やかな栗色の髪。
そして、まるで世界中の幸せに包まれているかのような、あどけなく、愛らしい寝顔。
シンは、なぜか自分の顔が熱くなっているのを感じた。
その幸せそうな寝顔を見て少し起こすのを躊躇ったが、
ヒューイがいうように、体が全くと言っていいほど動いていない。
そして、心なしか、顔色も悪い。シンは意を決して、少女を起こそうと、肩に手を触れた。
すると、少女の瞼が、ゆっくりと開いた。深い藍色の瞳が、シンを捕らえる。
まるで宝石のような、美しい瞳だった。少女の口が、かすかに動く。
しかし言葉にならず、かすれた息が、ひゅうひゅうと鳴るだけだった。
「おなか、空いているのかい?」
シンが尋ねると、少女はわずかに首を動かす。
シンはバッグの中から水筒を取り出し、少女を抱え起こす。
そして、少女に少しずつ水を飲ませた。水筒の水を半分くらい飲ませた後、シ
ンは袋の中の卵サンドを少女の口元に近づける。
少女はゆっくりとその卵サンドをほおばる。
「おいしい」
一言、少女はいうと、一口、また一口卵サンドをほおばった。
食べるごとに、その速度は速まり、
すべての卵サンドを平らげた頃には、少女の顔色はすっかりよくなっていた。
「ごちそうさまでした」
少女は丁寧に手を合わせ、シンに頭を下げた。
「よかった。元気になったみたいだね」
そして、少女はしばらくシンを見つめた後、ほほえみながら、頭を傾げてシンに尋ねた。
「あなた様は、どちら様?」