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太陽のはなびら

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【第六章:誰がため。我がため】



(……なかすいた)

歩いていくごとに、次第に声が鮮明になっていく。
しかし、声の主は一向に見つかる気配はない。
シンの顔には、次第に焦りの色がにじみ出てきた。
そんなシンを見て、ヒューイは一つ提案した。

「坊ちゃん。私は空から探します。何かあったら鳥笛で私を呼んでください」

シンは頷き、まず腕を伸ばす。
ヒューイがひじから先に移動するのを確認してから、ゆっくりと腕をあげる。
ヒューイはその巨大な羽を広げ、飛んでいった。
それを見届けると、シンは聞こえてくる声に集中する。

(……おなかすいた)

ようやくはっきりと何を言っているのか聞こえた。
女の子の声だった。
思考イメージをたどる事が出来れば、どこにいるのか解るのだけれど、
意識が途切れ途切れになっていて解らない。

「まずいな」

シンの脳裏にある仮説が浮かぶ。
深い森の中、一人。途切れ途切れの意識。
そして空腹であるという状態。
それらから考えると、おそらくこの声の主の少女は行き倒れている可能性が高い。
早く見つけてあげないと、そのまま飢え死にしてしまうかもしれない。

「坊ちゃん!」

空から声が聞こえて、シンは腕を伸ばす。その腕にヒューイがゆっくりと降りてきた。

「早かったね。何か手掛かりはあったかい?」

「ここから少しいったところに、一つの家があります。その中に一人の少女が眠っていました。おそらく坊ちゃんが聞いた声の主はその子かと」

シンは安堵した様子で胸をなでおろす。行き倒れではないようだ。

「しかし」

ヒューイは続ける。

「おかしなことに、その子の身体が動いていないのです」

作品名:太陽のはなびら 作家名:伊織千景