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太陽のはなびら

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【光の花(2)】



何時間ぐらい歩いただろうか。
次第に月がしずみ、代わりに太陽が木々と雲の間から顔を出してきた。
太陽を見たシンはかつて、自分の母が教えてくれた童謡を口ずさむ。
シンが寝付けないとき、よく母は歌ってくれた歌だ。

真っ暗闇に覆われて、行き先見えぬ、僕と君
心はすっかりすすけてて、ふさぎこんでた君と僕
それをみていた神様は、光のしずくを与えたよ
空に輝く光のしずく光、僕らの心を照らし出す
あまりにきれいで僕たちは、ぽろぽろ涙を流してた
流れる涙は心を洗い、僕らは歓び声揚げる
光は僕らを導いた、光が僕らを温めた
空に輝く光のしずく、まるで光の花だった

「【光の花】ですか。懐かしいですな」

ヒューイがポツリとこぼす。

「たぶん、ここの光のしずくって言うのは太陽なんだろうね」

ゆっくりと顔を出してきた太陽を眺め、シンは言う。

「僕は太陽が好きだ。どんなに落ち込んでいる日も、悲しい日も、寂しい日も、太陽は必ず昇る。そんな太陽が、今日も昇ってきたんだ」

シンは荷物を背負いなおし、平手でほほをたたき、気合を入れる。

「さあ、今日もがんばろう」

シンの足取りが、少しだけ軽くなった。

作品名:太陽のはなびら 作家名:伊織千景