太陽のはなびら
【響く心(3)】
「なんだい兄ちゃん。あんたが肩代わりしてくれるのか? あんまり金持ちには見えないが」
訝しげに商人はシンを見る。
「もし本当なら、そうします。けれどその前に一つ、聞かせて下さい」
シンは商人の目をまっすぐ見つめた。
「あなたは、本当の事を言っていますか?」
商人はため息をつき、答える。
「当たり前だ」
―大丈夫、これがもとから壊れていた事を、こいつは知らない―
まるで二重音声の様に、商人の相反する言葉が、シンの耳に、そして心に届いた。
今の時点で、商人が嘘をついている事は判明したが、まだ、足りない。
シンは商人に揺さぶりをかけることにした。
「それ、もとから壊れていたんじゃないですか?」
商人の顔に刹那、驚愕の色が浮かぶ。が、すぐにそれを隠す。
「おい兄ちゃん。いちゃもん付けるんなら証拠を見せな」
―大丈夫。これはブラフだ。こっちが仕掛けた細工を見破るような玄人じゃない―
二重の声とともに、商人が頭の中でイメージしている細工の仕組みが、シンの頭の中に流れ込む。
「残念ながら、僕はその玄人なんです。弱い接着剤で壊れた陶器をつなげる。それを手に取り、持ち上げると、接着剤の力が弱いため、ぼろっと真っ二つ。まるでその人が壊したかのように思わせる。あなたが仕掛けた細工。とても単純ですね。よくこんな幼稚な手を使えるものだ」
商人の顔から大量の汗が噴き出る。勝負はもう決まっていた。
頭の中に、商人の混乱した思考が流れ込む。
シンは顔をしかめ、シンは“力”のスイッチを切った。
事態は決着したかに見えた。しかし、商人は一つの事に気付いた。
シンが一つ。決定的なミスをしていた事を。