太陽のはなびら
【響く心(2)】
ピリカが近くに集まっていた村人に聞く。
村人は困惑した表情で、少年を一瞥して言った。
「ヨハンが何かやったらしい」
ヨハンは、村の中で少し有名な存在だった。
悪戯が好きで、多くの村人がその被害にあっていたからだ。
「ほら、壊れちまっているじゃねえか!弁償しろ!」
「違うって! 俺のせいじゃない!」
商人はヨハンを責め立て、ヨハンはそれを必死になって否定していた。
シンはたまらず、商人とヨハンの間に入っていった。
「何があったんですか?」
「ん? 兄ちゃんこのガキの知り合いか?」
「はい。この子の世話役の様なものです。この子は何をしたんですか」
商人はにやりと笑い、シンに話しかけた。
「ちょうどいい。兄ちゃん聞いてくれよ。お前さんところのこのガキがな。うちの大切なこのアーティファクトをぶっ壊しちまったんだ」
「シン兄ちゃん違うんだ! 俺はちょっと触っただけなんだ!」
泣きそうになりながら。ヨハンは必死に訴える。商人はそんなヨハンをせせら笑い、彼にすごむ。
「こういうことする奴はいつもそういうんだよな。金が無いのか? ああ? 俺はな坊主。専属の軍隊がいる商会に所属しているんだ。どんな方法を使ってでも金を出させるぞ!」
国という概念がない時代のため、
治安を守っているのは警察などではなく、商人と手を組んだ兵隊だった。
法律ではなく金銭で動く兵隊に、情けや容赦はない。
おそらくこの商人は、商品の代金が弁償されなければ、
ヨハンを人買いにでも売りつけるつもりだろう。
それを拒否すれば、彼の息がかかった兵隊が、村を襲撃してくるかもしれない。
それをヨハンは理解していた。ヨハンの顔から血の気が引き、小さな手は震えていた。
ヨハンは、助けを請うかのように、シンを見る。
「ヨハン。本当に、君は何もやっていないんだね」
シンは静かにヨハンに聞いた。ヨハンは大きく頭を縦に振った。
「解った。僕が何とかしよう」