小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

太陽のはなびら

INDEX|10ページ/37ページ|

次のページ前のページ
 

【響く心(2)】



ピリカが近くに集まっていた村人に聞く。
村人は困惑した表情で、少年を一瞥して言った。

「ヨハンが何かやったらしい」

ヨハンは、村の中で少し有名な存在だった。
悪戯が好きで、多くの村人がその被害にあっていたからだ。

「ほら、壊れちまっているじゃねえか!弁償しろ!」

「違うって! 俺のせいじゃない!」

商人はヨハンを責め立て、ヨハンはそれを必死になって否定していた。
シンはたまらず、商人とヨハンの間に入っていった。

「何があったんですか?」

「ん? 兄ちゃんこのガキの知り合いか?」

「はい。この子の世話役の様なものです。この子は何をしたんですか」

商人はにやりと笑い、シンに話しかけた。

「ちょうどいい。兄ちゃん聞いてくれよ。お前さんところのこのガキがな。うちの大切なこのアーティファクトをぶっ壊しちまったんだ」

「シン兄ちゃん違うんだ! 俺はちょっと触っただけなんだ!」

泣きそうになりながら。ヨハンは必死に訴える。商人はそんなヨハンをせせら笑い、彼にすごむ。

「こういうことする奴はいつもそういうんだよな。金が無いのか? ああ? 俺はな坊主。専属の軍隊がいる商会に所属しているんだ。どんな方法を使ってでも金を出させるぞ!」

国という概念がない時代のため、
治安を守っているのは警察などではなく、商人と手を組んだ兵隊だった。
法律ではなく金銭で動く兵隊に、情けや容赦はない。
おそらくこの商人は、商品の代金が弁償されなければ、
ヨハンを人買いにでも売りつけるつもりだろう。
それを拒否すれば、彼の息がかかった兵隊が、村を襲撃してくるかもしれない。
それをヨハンは理解していた。ヨハンの顔から血の気が引き、小さな手は震えていた。
ヨハンは、助けを請うかのように、シンを見る。

「ヨハン。本当に、君は何もやっていないんだね」

シンは静かにヨハンに聞いた。ヨハンは大きく頭を縦に振った。

「解った。僕が何とかしよう」

作品名:太陽のはなびら 作家名:伊織千景