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超短編小説  108物語集(継続中)

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「うーん、なんだよ、これ」
 高見沢はこう呻きながら、しかし本性は関西系イッチョカミ、興味津々でまずは魚屋、いや本屋のお母さんに尋ねてみる。
「そのノルウェイとはちと違うって…、作家は誰なの?」
 これにオカンは人懐っこい、だがかなり油っこい笑みで、高見沢ににじり寄ってくる。

「このイケメン魚を公にしたオヤジのことかい? 鮎風遊ってんだよ。鮎なのになぜか深海に住むナルシストなんだよね」
「ほっほー、そうなの? 初めて聞く名前だね。で、ホントにちと違う味なの?」
 高見沢はまじめに問い返した。
 これに対し、間髪入れずにオカンは「もち極上美味だわよ。あんちゃんのエントロピー高の脳内で、煮ても善し、焼いても善し、それに電車の中でも気兼ねなく味わうこともできるからね、どうだい?」と迫ってくる。

 高見沢はここまで求められるともう買わざるを得ない。五百円玉をお母さんに手渡した。だが、オカンは止まらない。
「お兄さん、あんたは満身創痍の単身赴任だろ。秋の夜は長くってね、愛人でもいりゃ、他に楽しみ方もあるもんだけど……、寂しそうだから、ちと美味しいオトト見つくろってやろうか?」

 ここまで親身になってくれると、高見沢はもう断れない。「ああ、そうして」と首を縦に振った。