超短編小説 108物語集(継続中)
「なるほどな、あのホームは老人派遣業をやってんだ」
百目鬼が確認すると、芹凛は明言する。
「そうです、だから息子夫婦宅に1週間に一度来る老人は坂巻雄三の……、つまり『成りすまし』Aです」と。
さらに口から泡を飛ばしながら言い切る。
「坂巻雄三は多分病死した。その後息子はホームと契約し、父親を竹藪に遺棄した。そう推察出来ます」
これに百目鬼は「わかった、だが、その動機は?」と突っ込む。
芹凛は若干自信なさそうに、「多分、私の勘ですが……、年金かな」と。
こんな推し量りを受け、百目鬼はデスクをドンと叩き、「それしかないだろ、とにかく老人が生きてる限り入金されるからな」と言い切る。
されども芹凛は「今派遣されて来るおじちゃんA、明日死ぬかも知れないし、息子にとって果たして安定的な収入源になるのかしら」と口ごもる。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊