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超短編小説  108物語集(継続中)

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 火事にもなりかねないヤカンの空だき、奥さんは慌ててガスを止めに走りました。そして、濡れたふきんを燻(くすぶ)るヤカンに被せ、無事鎮火させました。
「ワンちゃん、賢いわね。もう一歩で火事になるところだったわ。ありがとう」
 奥さんはそう言って、僕を思い切り抱き締めてくれました。

 公園で拾われて、お世話になり始めた家、幼いながらも何かお役に立ちたいと思っていた矢先の出来事でした。そしてこういう形で早速感謝されて、僕は嬉しかったです。
 だけど残念なことなのですが、その時まだ僕には名前がなくってね、ワンちゃんとしか呼ばれなかったのですよ。これがいささか不満でした。
 それで、ちょっと拗(す)ねるように、何も返事せずに横を向いていたのです。そうしたら、奥さんがハッと気付いてくれました。

「ゴメンね、ワンちゃん、そういえば、まだ名前がなかったわよね。そうね、どんな名前が良いかしら?」
 それからです、しばらく考えて、「良い名前があったわ」と奥さんがじらしてきました。「わんわん」と僕が催促すると、おもむろに発表がありました。

 それは……「危機一髪よ」だって!