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超短編小説  108物語集(継続中)

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 自分で言うのも恥ずかしいのですが、10年前の僕は結構可愛いかったのですよ。
 エッコとヨックンが朝起きると、まずおはようと挨拶に来てくれてね、ご飯を食べさせてくれたりしたのですよ。それにエッコなんか、学校から帰ってくると、僕の所へ飛んできて、「カッワイイ」といつも頬ずりしてくれました。それをダンナと奥さんが微笑んで見ていました。
 僕はそんな時に幼いながら思ったのですよ。こんな幸せな日々が続いて欲しい。そして、この家族をずっと守って行こうと。

 それは、この家で暮らし出して1週間経った昼下がりのことでした。奥さんは普段の疲れが出たのか、ソファーで横になり昼寝をしていました。僕はというと、奥さんの足下で、つけっ放しにされたテレビをウトウトしながら観ていたのです。
 だけど、そんな時に、なにか変だなあと感じたのですよね。焦げたような臭いがして、それがどんどん強くなってきました。

「これは、ちょっとヤバイぞ」
 僕はそう思いました。そしてなにか身の危険を感じ、パピーながらも「キャンキャン」と鳴き続けました。
 奥さんは僕の甲高い声に目を覚まし、「あららららっ、どうしましょう。ヤカンが真っ赤で、取っ手が燃え出してるわ!」と、大びっくり。
 そうなんですよ、奥さんはお湯を沸かしていたのを忘れ、寝てしまっていたのです。

 要は――空だき。今にも壁に引火しそうになっていました。