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超短編小説  108物語集(継続中)

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―― 鬼嬉々山の竹藪で、髑髏(どくろ)が出た! ――
 重機のオペレーターがショベルで、
 白骨遺体を掘り起こしたのだ。
 鑑識によると、
 遺体の主は80歳を超える男性。

 これは殺人事件か?
 だが骨には殺害に繋がる痕跡はなかった。
 ならば自殺か?
 されど遺書等は見つからなかった。
 ならば竹藪に迷い込んでの事故死?

 いや、違うだろう。
 やっぱり鬼嬉々山に棲む鬼の仕業だ。
 こう地元では囁かれてる。
 なぜなら、鬼は人から福を奪い取る。
 それで気分は上々、
 つまりルンルンになるのだ。

 いずれにしても真相は藪の中。
 今後の捜査を見守りたい。

「何よ、この報道! 他人の不幸を、茶化すんじゃないよ!」
 現場検証から署に戻って来た芹凛こと芹川凛子(せりかわりんこ)刑事が記事を読み、デスクで疲れを癒やす百目鬼(どうめき)刑事の前へ、――、カッカッカッと。
「おっと、お嬢さん、頭から湯気が……、水蒸気爆発してるのか? まあ気持ちはわかるぜ、だけど俺に向かって、そのスマホだけは投げ付けないで、チョンマゲ」
 こんな上司のたしなめに、まだ腹の虫が収まらないのか、「絶対、仏さんの無念を晴らしてやるわ」と拳をぐっと握る。
 これに百目鬼がすぐに問う、「で、どっから手を付けるんだ?」と。

 この切り返しにウッと声を詰まらせた凛子刑事、思考を脳内で一度シャッフルし、背筋をビシッと伸ばす。
 そして低い声だが、明確に。
「最優先は身元確認です」と。
 この部下の解答に、百目鬼は「異議なし!」と握り拳を前へと突き出す。芹凛はスマホを持ち替え、己の拳をそこへコツンと合わせるのだった。