超短編小説 108物語集(継続中)
初めまして。
僕は犬一匹です。
せっかくの機会、この場を借りて、みな様へちょっとだけですが、ご挨拶申し上げます。
僕がこの家に住み出して、随分と歳月が流れました。
そう、それは10年前です。生まれたての僕はダンボールの箱に入れられて、公園に捨てられていたのです。当時、幼なかったエッコとヨックンがクンクンと泣いていた僕を家に連れて帰ってくれました。
ダンナと奥さんはしぶしぶだったのですが、子供たちの願いを聞き入れて、僕を家に招き入れてくれました。そして身体を洗ってくれて、暖かいミルクまで飲ませてくれたのです。あのまま公園でもし捨てられたままだったら、多分お陀仏だったでしょうね。まあ言ってみれば、際どいところで命拾いしました。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊