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超短編小説  108物語集(継続中)

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 そんな浩二に「なんで沖縄から戻ってきたんだよ?」と問うと、「キムジナーの娘に結婚迫まられてな、参ったよ」と電話口の向こうでどうも薄毛の頭を掻いている模様。それに私がクスッと笑ってやると、浩二は「理由は他にもあって、何だと思う?」ともったい付けやがり……やんした。
 私はまったく興味な〜し。
 ですが、まっ一応友達なもんで、「お前の好物は鯛焼き、それが恋しくなったんだろ」と暖かく茶化してやりました。これに浩二は「それは三番目の理由かな」と否定はせず、そして暫しの沈黙後弾む声で答えたのです。
「自転車だよ」と。

「なぬ、自転車?」
 私は浩二の話しの筋が読めません。だって沖縄に自転車はありますし、それになぜ自転車からいきなり花見への誘いなのでしょうか?
 それでも想像を膨らませ、「鯛焼きを頬張りながら自転車で花見。意外にお前は花より団子の余裕ある平和愛好者だったんだな」とビンサラ特有の屈折が抜け切れてない言い回しで返してしまいました。

 浩二はこれに「ちゃう!」ときつく否定し、「今度の日曜の午前2時に、桜背割り堤(さくらせわりてい)で会おうぜ、じゃあな」と一方的に告げ、電話を切りました。
 私は一人ムカムカ。
 しかし冷静に考えると、今でも未確認生物を追っ掛けてる浩二、何かがありそう。そこで私は出掛けることにしました。