超短編小説 108物語集(継続中)
二郎、確かに五月蝿いヤツだ。
とは言っても一郎は、二郎に随分助けられてきたことは事実。一例だが、サラリーマンの単身赴任時代、何にでもイッチョ噛みの進言連射で孤独ではなかった。
お陰で一郎は無事勤め上げることができ、第二の人生へと突入した。そして金欠自由人となる。
こんな一郎をある日二郎が誘う、「刺激がなさ過ぎないか、一緒に小説書いて、世に打って出よう」と。
「えっ、俺が作る筋書きでは絶対辻褄が合わないぜ」と五感だけ人間の一郎が弱音を吐くと、「拙者がストーリーを組み立てる、お前はその文章に化粧をしてくれたら良いんだ」と説得される。
「なるほど、その手があったか」と一郎は納得し、その後合作で数編を執筆した。
しかし、基本はどこまで行っても同一脳内での創作。眼を剥くほど面白い作品が出来上がるわけがない。
うううと悶える日々だけが流れ行く。そしていよいよシニア本番となってくる。
その現象は、まあ言ってみれば、酒を飲まなくともいつも酔っ払った状態、ちゅうことで、幸せ雲にフワリフワリと乗ったような気分で暮らしていた。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊