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超短編小説  108物語集(継続中)

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 人の本能的な思いは脳内の大脳辺緑系の旧皮質で、また情緒的な感情は古皮質で、さらに論理的な思考は新皮質で呼び起こされ、互いに絡み合う。そして扁桃体により制御され、その記憶は海馬によって管理される。
 つまり心はこのシステムから生まれ、進化する。

 しかし完璧なものではない。呼び起こしの僅かな時間ズレや脳組織の微細な瑕疵で、結果としてもう一つの心を持つ自分が脳内に生まれることがある。
 それは奇跡ではなく、よくある話しだ。

 例えば一郎、少年時代にアナザー・ミー(another me)とやらが棲み着いた。そして高校の時に、こいつは自分ではあるが、微妙に人格が違うと認識する。
 こうなれば追い出すことが出来ず、一緒に生きて行くこととした。

 一郎の思考はどちらかというと情感を軸として成り立っている。
 だがもう一人の自分は論理的でクール。
 結果、二人の間柄はもちろん兄弟よりは近い。だが一郎自身ではなく、生命生活の相棒ってところだろうか。

 こんな仲ならば名前も必要。そこで一郎は、二心同体という変ちくりんさも考慮し、己の名からの横滑り、すなわち二郎と名付けた。
 二郎はこれに一旦歓喜したが、元々高慢ちきなのか、これを契機に何事にもあーしろこうしろと出しゃばるようになった。