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超短編小説  108物語集(継続中)

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 そもそも赴任して、前任者からアパートを引き継いだ時に予感した。こんなトホホな生活を。
「おい、高見沢、このベッドで寝る時は端っこで寝ろよ」
 目の前には巨大なキングサイズ・ベッドが。高見沢は、ガールフレンドのために隣のスペースを空けておけよ、という前任者からの気の利いた助言かと思った。
 しかし、次の講釈を聞いて、高見沢はズルズルッと。
「勘違いすなよ。おまえ夜に、おしっこに行きたくなるだろうが。このベッド広くってなあ、真ん中で寝てたら、うまく脱出できなくって……、お漏ししそうになるんだよ」

 これでなんとなくアメチョン生活のイメージが湧いてきた。そして、こんな忠告から始まったケンタッキー単身赴任、まったくその通りだった。それからというものは苦(にが)い澱(おり)のようなものが心の奥底に……どろりと。

 安アパートだが、スペースだけはある。玄関を入ると、絨毯が敷き詰められたリビングが原っぱのように広がる。だが一人じゃどう扱って良いものやら。そこは単に奥の部屋への通り道。やがてしっかりと踏み固まちゃって……、一本道に。そう、獣道となったのだ。

 また高見沢は典型的な日本人。巣は狭い方が安心する。そのためかキッチンに、とは言ってもゆうに八畳のスペースがあるが、テレビ、パソコン、本棚、デスク、もちろん冷蔵庫にチン、ありとあらゆる生活道具を持ち込んだ。要は日本での単身赴任生活、手を伸ばせば何でも手が届く、そんな空間をわざわざ具現化させたのだ。