超短編小説 108物語集(継続中)
世間ではきっと楽しいはずの日曜日、誰も高見沢の陋屋(ろうおく)に遊びに来てくれない。ホントは見つけて欲しい隠れ屋で鬱々と時を過ごす。気持ちはメランコリーの極限に至ってしまい、そんな心情を歌にでもするかと、侘びしい男の一人遊びを。そして出来上がった曲は――まったくのドド演歌。
『冬のケンタッキー一人旅』
? 見つけて欲しい隠れ屋の
広いベッドの端っこで
男は一人 涙を凍らせる
獣道 その果てに
チンと音する部屋がある
早く遊びに来てくれよ
あ〜あ、君を待つ
冬のケンタッキー 一人旅 ?
毎週月曜朝一番、コンビニのおばちゃんからの……ハイ、ハニー!
「あのおばちゃん、今でも落ち込んでそうな誰かに声掛けてるのかなあ」
高見沢は生き延びられたことに感謝し、アメリカのコンビニを懐かしく思い出したのだ。そんな時に、誰かが入店したのだろう、背後からコンビニ店員の無機質な声が聞こえてきた。
「いらっしゃー、まっせー」
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊