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超短編小説  108物語集(継続中)

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 するとですよ、驚き桃の木山椒の木、いやそこは柿の木でしたが、要は突っ立っていたのですよ。少しばかり年を重ねた女性が。
 その淑女とは、まさに高校時代に、演劇部で主役を張っていた同級生たちのマドンナ、そう、明らかに美鈴でした。

 つまり私にとっては初恋の人でありまして、今さらのことですが、昔の恋心に火が点いてしまいました。あとはハズミとイキオイで…、コクっちゃいました。
「美鈴さん、こんな所で再会できるなんて、やっぱり僕たちは赤い糸で結ばれていたのですね。僕はあなたに永遠の愛を誓いますから、結婚してください」と。

 私のこの半世紀遅れの告白に、美鈴さまから返ってきた第一声は――「ハァア?」。
 いわゆる疑問符が付いたものでした。

 しかし考えてみれば、これも当然ですよね。渋柿の木の下で、年甲斐もなくプロポーズするなんて、ちょっとね。
 自分ながら私は馬鹿かと思いました。そしてこれに呼応するかのように、屋根に止まっていたカラスがアホーアホーと甲高く鳴きよりました。

 うーん、これでは愛の告白が喜劇になる!
 私は反省し、美鈴さまを近場のカフェ、いえ、きつねうどんも注文できる、今時この辺りでしか見られない昭和風キッチャ店へと、とにかくエスコートさせてもらいました。
 そこで私たちはやっぱりきつねうどんをオーダーし、気の抜けた七味を一杯掛けて、私だけが昔話に花を咲かせた次第であります。

 それでもお腹も心も満腹となり、我が初恋はうどんのように長目で楽しもうと思い直しました。そして美鈴さまとのデートもそこそこにし、家へと帰ったわけです。