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超短編小説  108物語集(継続中)

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 それはまさに――奥山に 紅葉踏みわけ 鳴く鹿の…、そんな時節のことでした。
 私は一人山寺巡りをし、身体が汗ばんだ状態で里へと下りて来ました。すると藁葺きの家の庭に真っ赤に熟した柿が一杯なってるじゃないですか。
 お腹も空き、喉も渇いていましたので、ちょっと失礼しますと一つもぎ取って、ガブリとかぶり付きました。

「シブッ!」
 それは見事に渋柿だったわけでして、私はペッペッと皮を吐き出すしかありませんでした。
 だけどその様子を、しっかり背後から見られていたのですよね。

「柿ドロボウ、罰が当たったのよ、ざまあ見ろだわ」
 小馬鹿にされ、あとはプププと笑われたのです。
 私はこれにムカッときましたが、そもそも根は小心者。
 ですから、「ちょっとした出来心というか、どんな味かなあと思いまして、すいません」と謝りながら振り返りました。