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超短編小説  108物語集(継続中)

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 こんな謂われ因縁がある町で、町長の一声「妖怪祭りで町興しをしよう」と、本年より大々的に開催する運びとなった。企画は、妖怪に仮装した人たちが滝へと百鬼夜行し、滝壺に簪(かんざし)を投げ入れ、祈願するというもの。

 そしてその夜がやってきた。三日月は鋭い鎌のよう、闇空をグサリと突き刺す。その下の滝では、松明の紅蓮の炎が立ち上がり、倩兮女がケラケラと笑う。どうもこちらを窺ってるような、そんな非日常的な世界を味わってみたいと、一つ目小僧、お岩さんなどに扮装した人たちがぞろぞろと登り来る。
 しかし、どう見ても人間っぽい。

 それでも次から次へと簪を滝壺へと投げ入れて行く。これは願いが叶うよう、簪を生娘に見立て、天地万物の神に犠牲(いけにえ)として捧げるという意味。
 もちろん町長のアイデアで、入山時に1本千円で買わされる。

 つまるところ妖怪たちが棲む幽玄なる世界は壊れ、はしたない浮き世がそこに現出したのだ。