超短編小説 108物語集(継続中)
それにしても、時間を持て余してるって? とんでもない。まさに格闘の日々だ。今日も執筆に取り組んでいる。
小説を書き始めて五年、未だ完成をみないこだわりの一作・『風は何色?』の推敲だ。
しかし、考えてみれば、いつまで経ってもこの純愛物語は未完のまま。その理由は、陽馬に熱い恋愛経験がない。それにも関わらず、言ってみれば憧れだけでストーリーを組み立ててきた。そんな妄想恋愛小説、やっぱりオチが決まらないのだ。
それでも陽馬は思う、執筆活動はワイン作りに似ていると。
良い葡萄、つまり良好なネタを集め、搾り、物語として仕込む。この後、澱(おり)を取り除き、濾過。あとは熟成させる。そして試飲すれば、これが決まってとんでもない風味とくる。そこでまた澱を取り、熟成を繰り返す。このようにして完成度上げて行く。
されどもこの純愛もの、もう何回澱取りをし、濾過してきたことだろうか。しかし捨てられないのだ。なぜならこの作品に没頭する時、陽馬は主人公と同じ熱くて純な気持ちになれるからだ。そして今宵も…。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊