小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

超短編小説  108物語集(継続中)

INDEX|611ページ/761ページ|

次のページ前のページ
 


 誠実そうで、なかなかのイケメン。そんな男が、まるで判で捺したような毎日、夕方六時にはきっちりと勤めから帰ってくる。
 時間は充分ありそう。だが女の影はない。むろんデートに出掛けるところを見たことがない。三十歳前の割には、ちょっと気楽に暮らしすぎじゃない。
 これが同じアパートに住む者たちの、高池陽馬に対する印象だ。誰かなんとかしてやれよ、とのお節介な声も聞こえてくる。

 しかし、大きなお世話だ。
 見掛けは飛び切りの暇人だが、陽馬の脳はいつも沸騰し、きりきり舞い。なぜなら作家志望、小説を書くことに精魂を傾けているからだ。
 最近は出版しなくとも、ネット小説サイトに投稿できる。そして多くの閲覧者に読んでもらえ、時としてはコメントまで頂ける。自作品を世に出すことが実にイージーになった。

 だが反面、これは陽馬のライバルがごまんといるということであり、とにかく間断なく新作がUPされてくる。
 その中には駄作と思われる小説もあるが、ほとんどの作品は天晴れだ。そして時としてキラリと光る物語、傑作に出会うことがある。明らかに己の才能からは産み出せない書きっぷりだ。
 結果、陽馬はこの後必ず惨めな自己嫌悪に陥る。

 苦しい。だが最近、こんな打ちのめされた心情からうまく抜け出せるようになった。というのも、やっぱり自分風味の物語をコツコツと書き続けるしかない、と覚悟したからだ。いや、創作活動においては、こう考えないと次作品へと進めない、てなところもある。