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超短編小説  108物語集(継続中)

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 歳月の流れは早い。子供たちは結婚し、それぞれの家族を持つようになった。そして愼一は定年となり、田舎住まいをするようになった。
 さらに幾星霜の月日は過ぎ去った。そんなある日、妻が話してきた。
「ねえ、あなた、真衣が留学を終えて、最近会社勤めを始めたんだって。それで一度遊びに来るって。だから明日駅に迎えに行ってやってくれない」
 真衣は孫だ。中学生の頃に会ったきり、かれこれ10年ほどが経つ。愼一は楽しみだ。

 小さな駅舎を覆い尽くすように桜が咲き誇っている。そんな春陽の昼下がり、たった一輛のディーゼルカーがカタンコトンと駅に到着した。
 改札口で待つ愼一、真衣がどんな女性に成長したのか胸が高鳴る。ドアーは開かれ、黒髪が肩まである、スリムな若い女性がホームに降り立った。愼一はそれが真衣だとすぐにわかった。そして真衣も愼一に気付いた。
 それから信じられないことが起こったのだ。愼一は何かの運命に支配されたかのように真衣に手を振った。そして真衣はそれにすぐさま反応し、手を振り返してきた。

 愼一には忘れてしまっていた記憶が蘇ってくる。そしてやっと理解できた。