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超短編小説  108物語集(継続中)

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 十一歳の時に母を亡くした。姉の乙女が母代わりとなって育ててくれた。
 やがて少年から青年へと。そして十八歳の時に、江戸の千葉道場に入門できた。その後五年の剣術修行を終え、二十三歳の時に土佐へと帰国した。いろいろなことがあったが、武市半平太の土佐勤王党に加盟した。

 そして脱藩。
 それは二年前のことだった。
 それから勝海舟先生との出会いがあり、弟子入りする。
 土佐では武市半平太が投獄される事態の中、龍馬は勝海舟の薦めにより海軍塾の塾頭に任じられた。

「それにしても、ち〜と目まぐるしかったかな」
 龍馬は闇に向かってふうと大きく息を吐くが、脳裏をじんわりと過ぎっていく、楢崎龍(ならさきりょう)の言葉が。

「同じ龍、共に生きたいの。だから必ず帰ってきて……、私のところへ」
おりょうはそんなことを囁いて手を振ってくれた。

 三十三間堂の南にある天誅組の隠れ家で出会ったおりょう。父の死により背負いきれないほどの不幸に見舞われてる。しかし、それにもめげず、いつも気丈に振る舞っていた。そんな勝ち気な娘が涙を零した。
 龍馬はその瞬間に決めた。おりょうと夫婦(みょうと)になろうと。

「この旅が終われば、内祝言だけでも、すぐに挙げてやろう」
 こう結論付けした龍馬、また一歩前進できたかように安堵感を覚えた。そのお陰か、あとは心身とも闇の中へと溶けて行き、深い眠りへと落ちていった。