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超短編小説  108物語集(継続中)

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 この出来事から半年が経過し、2007年11月11日、イスラエルの日刊紙が報じた。

 美術館に収蔵されていたブレゲ作の逸品、懐中時計【 ブレゲ No. 160 】は1983年に盗難に合った。しかしながら今回25年振りに、幸運にも美術館に戻ってきた。
 遡ること200年前、それは1789年7月14日、フランス革命が勃発した。そしてフランス王妃のマリー・アントワネットはタンプル塔に幽閉された。

 王妃はこのようになることを予知していたのだろう、世紀の名工、アブラアン・ルイ・ブレゲに、「お金はどれだけ払ってもかまわない。世界で一番素晴らしい懐中時計を作ってほしい」と依頼した。
 これを受けて、ブレゲは暗闇でも時刻を音で知らせるミニッツリピーターを開発し、それを盛り込んだ。他に永久カレンダー、均時差表示、自動巻などを装備させた。さらに内部の機構を見ることができるようにと、クリスタル製文字盤をはめ込み、美しく仕上げた。
 色彩は金色、まさに煌びやかなこの懐中時計、完成に40年の歳月を要した。そのためブレゲはそれをマリー・アントワネットに手渡すことはできなかった。また王妃はそれを手にするチャンスはなかった。

 さらに奇妙なことに、美術館に届けた男は話していた。
 夢の中で、ギロチンに合う婦人に時計を渡そうとしたが、それを果たせなかった、と。

 今回、懐中時計【 ブレゲ No. 160 】、通称『マリー・アントワネット』はひょんなことから美術館に戻ってきた。
 それにしても波乱な時代を超え、今も正確に時を刻み続けているから、これはまさにミラクルと言えるだろう。