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超短編小説  108物語集(継続中)

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 スッゲーなあ、俺も一度猛スピード『X』にお目に掛かりたいよ。
 純一は興味津々、もういても立ってもいられない。早速電車から降りて、「明日のデート、予定を変更させて欲しいのだけど」と陽子に電話する。

 純一と陽子、付き合い出してもう5年。しかし、未だプロポーズに至っていない。陽子はこんな煮え切らない純一に、そろそろ二人の恋を終わりにしようかと考え始めてる。そんなこともあり、明日食事後に切り出すつもりだ、もう会わずにおこう、と。

 だが、こんな重大な決意を伝えるためにはそれなりの場の流れもあるし、心の準備も必要。そのため「どこへ行くの?」と陽子が問うと、「うーん、それはね」と純一が口籠もる。長年の付き合いだ、陽子にはわかる、こういう時の純一はその後突飛もないことを口にするものだと。そこで「言いなさいよ」と陽子が母親のようにせかすと、純一は案の定言葉を詰まらせながら「猛スピード『X』というヤツを……、見に行きたいんだよ」と。

 陽子は一応ニュースで『X』を知っていた。しかし、わざわざ見に行くなんて、そんな少年のような純一が可愛くもあり、その後に別れ話しをするなんて、ちょっと可哀想かもと心が揺れる。そこで思わず「いいわよ」と返してしまうが、後は「新幹線はグリーンでね」としっかりとオファーする。誘ったのは純一だ、致し方なく「うん、そうするよ」と答えざるを得なかった。