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超短編小説  108物語集(継続中)

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 洋介は今、柔道やレスリングの道場が門を開き、また俳句や囲碁等の鍛錬場が建ち並ぶ並木道、そこを会場へと急いでいる。
「ほう、みなさんお互いに研鑽し、日々勝負してるのか。大したものだよ」
 こんな感想をぶつぶつと漏らしながら会場へと入って行った。それからしばらくして、肉じゃが格闘技の幕は厳かに切って落とされた。

 まずはそれぞれからの本家主張のプレゼンがあった。どちらも理屈は通っていて、これだけでは到底決着できるものではない。ならばその味で、長年の戦いに終止符を打てと声が上がった。
 いざ本番、背筋がシャキッと伸びた料理人二人が登場してきた。どちらも甲乙つけがたい風格がある。

「ピー!」、料理開始の笛が会場一杯に鳴り響いた。シェフ二人が厳かに、しかし手元軽やかに肉じゃがを作り始めた。しかもスクリーンに映し出された海軍レシピに沿って。
 このレシピがまたなかなかのものなのだ。

肉じゃが
 材料 : 生牛肉、蒟蒻、馬鈴薯、玉葱、胡麻油、砂糖、醤油 

 所要時間
 1.油入れ送気
 2.3分後生牛肉入れ
 3.7分後砂糖入れ
 4.10分後醤油入れ
 5.14分後蒟蒻、馬鈴薯入れ
 6.31分後玉葱入れ
 7.34分後終了

 どちらの料理人も1秒たりともこのプログラムを違(たが)わせない。まさにがっぷり四つに組んだ肉じゃが格闘技。
 そして、お見事!
 34分でピタリと完了し、万雷の拍手がわき立った。

 結果判定は観衆参加型、だから全員に両市の肉じゃがが振る舞われた。洋介も判定のため味わってみた。どちらも美味い!
 要はおふくろの味を超えていた。まさに水兵さんの脚気を明日にでも治してしまうほどの迫力味だ。

 思わず「ウッメー!」と。