超短編小説 108物語集(継続中)
洋介は迷った。躑躅市と椿市の優劣が付けがたい。
しかし、一つだけ違っていた。躑躅市の肉じゃがに青えんどう、そう、グリーンピースが入っていたのだ。
洋介はこれでついに、思いっ切り屁理屈つけて、「本家は、彩りを良くした躑躅市だ」と軍配を上げた。
その後、それらは集計され、『伝統と未来ある肉じゃが』にふさわしい本家が発表された。
それは洋介と同じく――躑躅市。
しかし、その理由は洋介の彩りとは異なっていたのだ。
躑躅市が使ったグリーンピース、
それは青えんどうの「Green peas」ではなく、平和の『Green peace』。
そこからのメッセージは――両市の150年間に及ぶ肉じゃが戦争に終止符を打ち、平和に!
この肉じゃが格闘技を通じて、新世代への本家は躑躅市に一応決定されたが、両市は互いを讃え合った。そしてその後はより美味しい肉じゃがを研鑽して行くこととなったのだった。
作品名:超短編小説 108物語集(継続中) 作家名:鮎風 遊